研究概要

理化学研究所では、2011年度より「手元で役に立つ小型中性子源システム」の構築検討を集中的に開始し、2012年2月より、仁科加速器研究センター内RIBF棟地下1階K1スペース北において、構築を開始した。RANS(ランズ、RIKEN Accelerator-driven compact Neutron Source、理研小型中性子源シス テム)は2013年1月初頭、施設検査に合格。RANSの整備及び高度化を進めると同時に中性子イメージングを柱とする小型中性子源システムのFeasibility studyを開始した。

中性子線の利用は、茨城県東海村にある日本原子力研究機構研究用原子炉JRR3や京都大学原子炉実験所内研究用原子炉KURといった研究用原子炉において、また2008年12月より利用開始となった大強度陽子加速器施設J-PARCにおける物質・生命科学実験施設(MLF)において展開されている。近年これら大型施設においても学術研究を主とした流れからに加えて、産業分野による中性子線活用へと利用者拡大ならびに利用分野の拡大が顕著になってきている。中性子線は金属に対する高い透過能、 水素やリチウムといった軽元素に対する感度の高さなど、X線、放射光、電子線等の量子ビームとは異なる優位性がある一方、その利用機会、頻度は前述の大・中型施設における共同利用制度を通してのみ可能であり半年から1年前に課題申請を行う必要がある。このような現状のもと、気軽に手元で利用できえる小型中性子源の必要性が静かに認識されるようになっていた。

RANSは、3年間の時限プロジェクト:イノベーション推進センター、ものづくり高度計測技術開発チーム(山形豊TL)により、基礎的な設計・構築が2011年より行われ、2013年度より光量子工学研究領域 光量子技術基盤開発グループにそのアクティビティーの中心を置き本格的な研究開発のフェーズに突入している。RANSのミッションは大きく分けて2つある。解析ソフトウェアまで含めた中性子の専門家以外が容易に使用できるような、「御用とお急ぎ」にも対応できる「手元で使えるシステム」すなわち、普及型システムを目指した据置型システムとしての高度化の実現、これが最初の目標である。具体的には、中性子の優位性が発揮される金属材料のバルク観察や新材料開発などにおいては、非破壊観察のための中性子イメージング、特にパルス中性子イメージングや境界面が鮮明となる干渉イメージング(位相コントラストを含む)が容易に実行できるシステムの開発、また近いは将来冷中性子源を構築し、中性子小角散乱や回折実験も可能な「現場で使えるシステム」目 指している。

橋梁などの大型構造物を基本とするインフラ予防保全は現在の日本が抱える大きな問題である。このインフラ予防保全のまったく新たな手法を導入することが、RANSの2つ目のミッション、すなわち、将来可搬型へ発展する、橋梁非破壊検査健全性診断システムの開発がそれである 。インフラ対応可能な 高速中性子大面積イメージング検出器開発は昨年度より開始されており、30㎝厚のコンクリートサンプル透過中性子の検出試験も開始している。本システムは屋外利用可能とするため、環 境への放射線量の低減も含めた、高速中性子線源の開発も行う。